子ども茶碗最高峰はウメテツ
お子さんは白いご飯をたくさん食べてくれますか?
様々な味のふりかけに頼ったり、味のりを用意したり、少しでもちゃんとした量を食べさせるため、毎日ご苦労なさっていませんか。
可愛い子ども用お茶碗なら、とわずかな希望を胸に、目的がはっきりしないイラストが描かれたお茶碗を眺めたり・・・。
これは、お茶碗難民になりつつある親御さんとお子さんを救うためのTip
How to do
- 家族で京都鉄道博物館のミュージアムショップを訪問する
- ウメテツというツバメのキャラクターを用いたお土産コーナーを探す
- 子ども用お茶碗があるので購入する
- おうちまで大切に持ち帰り、丁寧に洗う
- 白ごはんをよそい、子どもに食べさせる
- 食べたら出てくる自信に満ちた丸々ほっぺのウメテツと添えられた台詞を子どもと楽しむ
- おかわりは好きにして良し
Pros & Cons(プラスとマイナス)
Pros
家族で楽しくお出かけした時に購入したものは好意的に受け止められる
現在は新型コロナのため、京都鉄道博物館もしばらく臨時休館されていますが、事態が落ち着いたら、ぜひ家族でお出かけしてみて下さい。
電車に関わる楽しい展示が所狭しと並んでいます。
ミュージアムショップは博物館出口にあるため、楽しい思い出と共にお土産を選ぶことが出来ます。
そして、お出かけの記憶が呼び起こされるお茶碗は、ご飯の時間を楽しくしてくれます。
食の細いお子さんも、「あ!あの時の」と思い出し、積極的にお茶碗を手にすることでしょう。
しっかりとしたデザインの焼き物である
子ども向けなら造りが粗いのでは、と心配ですか?
このお茶碗にその心配はご無用。
上の写真を良く見て下さい。丸みを帯びた茶碗の縁、選び抜かれた釉薬で描かれた、深く淡い色のウメテツと梅の花。
台座を取り囲む青い文様は、わずかなグラデーションになっています。
手に持てば、小さな可愛らしい手のひらにすっぽりと収まることでしょう。
現物を手に取ってみれば、より焼き物としての魅力が伝わるはずです。
内側にごはんがくっつかない仕様になっている
お箸やスプーンをまだまだ上手に使いこなせていないお子さんでも、最後までスムーズに食べることが出来るよう、お米が内側にくっつかない仕様になっています。
お茶碗内側全面に小さい凸凹があり、米粒がお茶碗から離れやすいのです。
プラスチックのお茶碗の中には、内面がつるんとしており使いやすそうに見えて、実はお米がくっ付き食べにくいものがあります。手先が器用な大人ならば特に気にならないことかもしれません。
しかし、お米を食べるのはほぼ毎日のこと。
その繰り返す時間に小さなストレスが一つ無くなるのは、多くの人にとって喜ばしいことではないでしょうか。
子どもにプレッシャーを与えないイラスト
さて、ここからのProは、このお茶碗が最高峰である要因の主たるものです。
白米を食べきり、ようやく底に到達した小さな勇者たちを称えるツバメ、それがウメテツ。
強い眼差しと凛々しい眉毛が成し遂げた喜びを共に喜んでくれています。
ご丁寧に名前が描かれているところにも親しみが増します。
知ってるよ、ウメテツ。
そして告げられる一言 <おかわりしようかな>
かつて、これほどまでに人の心を優しく受け止め、問いかけてくるような茶碗底のイラストがあったでしょうか。
子ども茶碗で探すと良く見つかるのは、可愛らしいタッチの動物やお花・水玉模様などのマークが描かれたものたち。
他には、お米をほぼ食べ終わっているのに <がんばれー> <ひとくちちょうだい>などと無理難題を投げかけ、子どもたちを困らせるもの。
さらに、個人的にこれはどうか?と思うのが、<頑張ったね> <ごちそうさま>と一方的に食事終了である旨を告げてくるタイプ。
これらの中でウメテツは、
「おかわるも、おかわらないも、決めてない」と言うのです。
<おかわりしようかな>に続く台詞を、ウメテツは言わない。
そこには、何のプレッシャーもありません。
お茶碗底で会えたことを、静かに喜び、称え合い、前に進むも後退するも自由なんだと未来を解放してくれているだけなのです。
ここで、下のProに移ります。
採択権・決定権とも子供に託されている
ウメテツは<おかわりしようかな>の後に、
・・・「うん、おかわりしよう!」
・・・「いや、やめとこう」
そのどちらも言いません。
ならば、誰が、おかわりの行方を決めるのか。
この食卓の未来を選び、提示するのか。
もしこれを、当事者の子どもたちが読んでいたら、その握りしめた短い子ども箸を緊張で落としているかもしれません。
そう、ウメテツは子どもたち自身に採択権・決定権を委ねているのです。
今まで、どちらかと言えば「あれしなさい」「これしなさい」「これは○○でしょう」「あ、お母さんやっとくから」などと、ほとんどの物事を保護者に方向付けられてきた幼子たち。
そんな彼らにウメテツは自分で決めるよう促します。
食事を摂ることは自分自身を創り上げることに他ならない。
1分1秒先の君たちを作る過程は君たちが決める必要がある、と。
人生は選択の連続です。
ウメテツは日々の食事を通して、子どもたちに選択することの重要性を染み込ませているのです。
Cons
焼き物なので割れる
これはほとんどの陶磁器に当てはまるものです。
焼き物は土から生まれ土に還ります。
ウメテツのお茶碗も同様に、衝撃により欠けたり割れたりします。
ただ、終わりがあるものって、いつかお別れすることがわかっているからこそ大切に出来るという利点もあるのではないでしょうか。
限られた時間だからこそ、より深い愛情や思いが湧くこともあるでしょう。
個人的には、これはマイナスではないのかも、と思っています。
使う年齢を選ぶ
上に書いた様に、割れ物ということからも、一定の年齢以上のお子さんが使うのにふさわしいと思います。
もちろん、保護者の方が器を持って食べさせたり、適時フォローしてあげるならどの年齢でも使用可能です。
子ども自身が手で持ち使う場合は、少し気をつける必要があります。
「・・・かな」の語尾なら、YES/NO 両方が使えるという事態を子どもに悪用される
「うん!」「いやー」「違う」「後でやる」などの白黒はっきりした返答や、「どうしよう」「わからない」という迷いの中にいる返答を子どもは使いがちです。
ここに、知識として、「・・・かな」がもたらす、前向きに検討しているようでまだ決定していない状況を表す言い方を得たとしたら、どうなるか、ということです。
一つは、自分が本当に前向きに検討し、やる気や準備が整うのを待っている状態であることを周囲に説明するために使う場合。
今までなら「待ってて、後で!」「今じゃなくて」の台詞から「アンパンマンのパズル、作ろうかな」「ピーマンは後で食べようかな」というように、自分で未来を決めるから保護者たちは見守っているよう告げてきます。
もう一つは、前向きである振りをしているだけの場合。
「片付けよっかなー」「納豆は後にしようかな」「時間割り、しとこうかな」
枚挙に暇がありません。こう言っておけば周囲は子どもが自ら行動を起こすと思い込むだろう、との作戦です。そして、子どもはにやりと笑い「まだしばらく遊んでられるぜ」と小さく呟くのです。
対策としては「・・・かな」発言の後、決定を急がせるのではなく、その後の予定を伝えたり、発言について意見を述べ、一緒に考えてあげること。
そうすれば、ウメテツがもたらした選択の自由は悪用されることは少ないでしょう。
What happened?
最近、お茶碗くたびれてきてるな、と思ったのは子どもが5歳ごろのことでした。
プラスチックの落としても割れない軽い子ども用お茶碗。
割れない以外の利点は特に考えず、絵柄にもこだわりはありませんでした。
使用している中で少しばかり気になっていたのは、子どもが食べ終わる頃、いつもご飯粒がカリカリになって茶碗内側にくっついていること。
米粒がお箸で取りにくそうだな、と。
他の食器も、例えばIKEAで買ったカラフルなお皿がプラスチックだったり、我が家の子ども用食器がとにかく割れないことに集中していた乳幼児期で、今思うと、永遠と安定を求め過ぎていたように思えます。
食べるのが遅く、少食の息子が毎食喜んでお米を食べてくれるようなお茶碗。
長く愛用出来る子どもっぽ過ぎないものが良いかしら、やっぱり前回同様に落としても割れない方が安心だから、素材を吟味して、さらに内側にエンボス様加工がされているものを探そうかな。
いろいろ考えました。
しかし、探し続ける私の前に現れてくるのは、どれも決定打に欠ける品物の数々。
1.アニメや絵本のキャラクターが外側に描かれているもの
購入当初は大好きであっても、子どもの好き嫌いは移り変わりが速いのですぐに飽きるかも。
よって却下。
2.保護者の趣味を全面に押し出した、シンプルイズベストなもの
・・・一度、白地にぐるりと藍色のラインが入ったお茶碗を子どもに見せてみましたが、
「おじーちゃんちの湯のみ」と言われて終了。
薄いブルーの陶磁器のお茶碗は
「そうめん!」と米を忘れられて終了。
3.内側に台詞が書いてあり、誰かの気持ちを励まそうとしているもの
可愛い動物のイラストとともに、
<ごちそうさま!><いつもありがとう!><おいしかったよ!>と描いてあるのですが、場所が茶碗内側の最上部。これは、ご飯をよそった時にも見えるように、との配慮だと思いますが、これから食べ出す時にこの掛け声は早すぎる。
そして、この掛け声が欲しいのは、保護者の方なんですよね。子どもが保護者に向けて発するべき台詞をここに描かれてもね、ということで却下。
4.スポーツ系の明るく楽しく!というもの
茶碗底に<GOAL!><HOME RUN!><DUNK!>とサッカーゴールや野球場、バスケットゴールとともに描かれているものです。
ご飯をたくさん食べ、体を丈夫にし大活躍するぞ!というコンセプトがしっかりと伝わります。
ただ、この時の私は子ども茶碗の方向性のとっちらかりぶりに落胆していたため、非常にネガティブな見方しか持てませんでした。
まず、うちの子、めっちゃインドア派。
運動という習い事で通えているのはスイミングだけ。上記のスポーツはしたことも見たこともほとんどない。
そもそもこんなに大活躍することを期待するなんて、子どもにも白米にもプレッシャーが大き過ぎるんじゃないか。
そう感じた為、諦めました、このお茶碗。
5.虫や電車などのお米と全く関係ないイラストが描かれた子ども茶碗ならではの賑やかなもの
外側全面にカブトムシ、クワガタ、トンボなどが描かれたものを見つけました。
内側にエンポス加工もあり、もう、これで良いかと思いましたが、当時うちの子どもが一番好きな虫はダンゴムシ。通っている保育園でも、クラスの団体演技として「すすめ!だんごむし」を踊るくらい周辺からしてダンゴムシ推し。
ダンゴムシ柄のお茶碗は・・・なさそうでした。
もしあったとしても、数年後に「なんで買ったんや!」とトラブルの元になりそうですし。
電車は良いよね、前へ、未来へ進むイメージがあるし、絵柄の雰囲気さえ良ければ、大きくなっても使えそう。気を取直して電車柄で子どもの心を掴めたらと探してみたところ、シックなものから可愛いものまでその裾野の広いこと。
日本にはJRから各私鉄、地下鉄と、それはもう様々な電車が走っています。
電車で探せば、必ず、良いお茶碗に出会えるはず!
そう確信し、ここに至って、電車方向で決定しました。
素材は割れないことも大切ですが、私が結婚前に買った鼻につくおしゃれイラストが描かれたコレール皿が全く割れず、新しいものに変えたいのに買うことが出来ていない件を思い出し、陶磁器に決定。
後は、デザインだけでした。
その後も「子ども・お茶碗・陶磁器・電車」と、ネット検索に明け暮れていたある日、ウメテツはふいに現れました。
そこからは一目惚れです。
すぐに京都鉄道博物館に出かけ、入館と同時に出口へ向かい、ミュージアムショップのお茶碗が並んでいるコーナーを確認。
安定の数量があることを把握した上で、そこから博物館内の見学をするという流れでした。
無事に手に入った時は、それはもう嬉しかったです。
なんて素敵なお茶碗なんだろう、と子どもにも熱く語ってしまいました。
見て下さい、ウメテツのお茶碗には、お揃いのお汁椀があるのです。
どうです、素敵でしょう?
もちろん、こちらも購入しました。
息子は今、10歳になったところですが、今もウメテツのお茶碗とお汁椀を愛用中です。
そして日々、
「おかわりしようかなー、どうしようかなー、照り焼きやしなー」
「たまごかけご飯やし、おかわるでっ!」と自分の意思を明確に伝えてくれています。
そんな時のウメテツは、照り焼きの茶色いタレやたまごの黄色にまみれながら、いつもよりちょっと和らいだ表情をしているのです。
Conclusion
最後になりましたが、ウメテツは、ご存じ京都鉄道博物館の公式キャラクター、ツバメの男の子です。SLや鉄道が大好き。鉄道博物館が新たに誕生することにより、自らマスコットキャラクターに名乗り出たそうです。
自ら選択することで、ツバメ生を切り開いてきたウメテツ。
その志は子どもらにしかと引き継がれていくことでしょう、このお茶碗をもってして。
おまけ
ふふふ、このお茶碗のことをどうしても、いつの日かきちんと書きたいと思っていたので、今、書き終えて、すごく幸せです。
ウメテツのキャラクターを作って下さった、当時、京都嵯峨芸術大学短期大学部 美術学科の相川遥香さん、お茶碗製作に携わった皆さん、どうもありがとうございました。心より感謝致します。
なんだか映画のスペシャルサンクスみたいになってますね。ふふふ。